hkmaroのブログ

読書の感想など

今日読んだもの

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 少女小説というものなのだろう。私はその方面の小説はほとんど読んだことがないが、以前百合漫画に異常にハマっていた頃のことを思い出す。

 死にたい気持ちの描写がとても良い。死にたい気持ちは孤独な気持ちととても関係が深い。主人公は虐められているから孤独なのだろうか。私はそうではないと感じる。孤独は心象として現れてくる。いくら自分に寄り添ってくれる存在が現れようとも、孤独を拭うことが主人公の晏奈にはできない。

 死にたい気持ちは、海や、プールや、街や、映画館や、神社や、公園という景色に宿っている。死にたい気持ちと世界の現れ方は一体である。社会的な場に赴くことによっては孤独は埋められない。単に人と会話するだけでは死にたいままだ。だから言葉よりも歌のほうが死にたい気持ちに寄り添ってくれる。そして小西海は、音楽として晏奈の前に現れてくる。

 小西海は晏奈にとって世界の変容として映っている。あるいは兆しとして。そうした兆しが例え小説の中にしかなくても、それが音楽のように読む者の死にたい気持ちに寄り添うなら、小説は確かに読む者を救えなくとも癒やすだろうし、死にたい気持ちが消えなくとも生きさせることができる。

 死にたい死にたいと思いながらでも生きることが、世界への報復の始まりなのだから、死にたい人間はそれでも生きているだけで世界に対して見事に戦っているのだと思う。