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hkmaroのブログ

読書の感想など

七月三十日 

七月三十日。昼:生食の冷やしラーメン。蒸し鶏が乗っていてうまい。夜:吉そばの冷やし。意識して肉や脂を少なめにしようと努力することにした。

『ひばりくん』読んでからひばりくんのエロ同人誌が欲しいなあ、とかいうことばっかり考えている。恐らくこのようなひばりくん効果は、作者が想定しなかったものであろう。だからこそこのマンガはその辺の萌えラノベみたいに長く続くことがなかったのだろう。ひばりくんを、耕作と自己同一化して読む読者たちの、性の対象として描くことが、想定されてなかったのではないかと思う。しかし実際には読者たちはひばりくんに萌え萌えだったわけだ。

ひばりくんは男なのに女、あるいは女なのに男、という二重性を持っていて、昨日はこれをインターセクシュアリティだと考えたわけであるが、もっとよく考えてみるとこれらの互いに矛盾する性質は平行して存在しているのであり、それらが場面場面によって使い分けられ、そして場面によって男だったり女だったりするひばりくんに対して耕作はどのように接したらよいかわからず、葛藤するのである。つまり、ひばりくんは中間的というよりは葛藤的であり、その葛藤はひばりくん本人よりも耕作やいばりやつばめ達周囲の人物において表面化する。

『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』という本がちょっと前に出たが、そこには売れたライトノベルのキャラたちは、二面性を持つものとして描かれ、それにより人間的な深みを得る、とかいうことが書いてある。これは一般的なライトノベルへの先入観とは大きく食い違う解釈である。ライトノベルに出てくるキャラなんてのは、家畜のように従順な美少女達ばかりであり、主人公やその美少女達は安っぽい価値観しか持たず、たいていはご都合主義的な隠された能力だの金持ちのおじさんだのの仕掛けが発動して悪者を懲らしめて事件が解決してしまう。もちろんそういういわゆるラノベだと思われているラノベが実はクソラノベに他ならぬという事情もあり、この本における解釈はそう間違っているとも言えないのだが、しかしその上でなおライトノベルのキャラクター達が人間的な深みを持っている、とまで言い切るのにかなりの躊躇いを感じるのも事実である。なぜならラノベ以外の小説の登場人物のほうがよっぽど人間的な深みを持っているように感じられるからだ。なぜなら中高生以外の様々な年代の、様々な階級の、様々な価値観を持つ人々が、ラノベ以外の小説には登場するからである。そこへいくとラノベは、いかに内面の人間的な深みがあるとか言われても所詮たかが知れていて、そうした強弁が滑稽に聞こえないということがない。恐らくここで内面の人間的な深み、と呼ばれるようなものを文字通り受け取ると間違いで、これはリアルな人間性というよりもむしろキャラ立ちやドラマに関係してくるような何かである。

私が思うに、もしマンガ的な物語に葛藤のモデルが存在するとしたら、それはひばりくん的な二重性にであろう。彼は男なのに男でない。あるいは他のマンガでは、人間なのに人間でないキャラが、あるいは魔王なのに魔王らしくないキャラが、数多く登場する。それが滑稽譚に生かされようとも、悲劇に生かされようとも、あるいは「ギャップ萌え」に生かされようとも、何らかの形で矛盾葛藤が演じられることには違いないし、その矛盾葛藤の内にこそキャラクターの本質であるとか、悲劇の本質であるとか、萌えの本質であるとかが宿るわけだ。

例えば教師なのに全く教師らしからぬ先生、という人物はわが国の沢山の物語に見出すことのできるキャラクター類型であり、そういう先生は異様に背が小さかったり、教師なのにロックが好きだったり、教師なのに生徒に酒を飲ませたりする。そして読者たちはその教師なのに教師でないという矛盾葛藤を楽しむ。教師なのに、現実にはその理念的な教師像から外れるところに、そのキャラの固有性みたいなものが生まれると、我々読者は恐らく思ったり感じ取ったりするのであろう。

これに関連し、主人公の描かれ方と脇役の描かれ方というものの違いを最近考えていて、例えば前者はその属する社会的な肩書きとのズレ、つまり矛盾葛藤がキャラクターの肉付けとなるのに対し、脇役においてはそのズレはあまり大きすぎるとよくない。寿司屋はいかにも寿司屋的に振舞えばよく、その設定に実は寿司屋を始める前は国際諜報機関に所属していた、などという設定が加わって具体的にエピソードが挟まってしまうと、キャラがいささか前景化し、主人公を食ってしまうような事態にもなり得る。ゆきめクンが律子先生を、あるいは春夏が愛子ちゃんを食ってしまったのは、この矛盾葛藤を抱えているのが明らかに前者であったからなのだと推測できる。

あと、今日は『テラフォーマーズ』をようやく買えた。面白いんだけど、これは絶対に人種とか気色悪さとかの色々な面で抗議が来るだろうから、今のうちに買っておかないと絶版になるかもしれない。