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hkmaroのブログ

読書の感想など

『読書について』ショウペンハウエル

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

ショウペンハウエルは初めて読んだが、ものすごく反動的な思想の持ち主だということがわかった。しかし、同じ保守反動でもネット右翼にはない気品めいたものを感じるのが不思議だ。恐らく保守主義者の知的な理想像にはショウペンハウエルも含まれるのではなかろうかと思う。ショウペンハウエルは、昔から存在している秩序を破壊する現世的なものには仮借ない批判をする。現世的なものを流されやすいものとし、昔からあるものを永遠に続くものとして理念化する。この本では哲学や思想をも「文学」という言葉に含めて語っているが、真の文学者は同時代の名声を得られず、後世評価されるのだという。また、いつの時代も生きているうちに名声を得る人間は似非文学者なのだという。こうしたところにショウペンハウエルの現世否定性を感じる。教科書の類にはこれを指して「ショウペンハウエルの厭世主義」と書いてあるのだろう。ネット右翼的な思想とは真逆だ。ネット右翼の思想とは現状追認の思想でしかない。それはショウペンハウエルが最も嫌悪した態度だ。

よっぽど恨みがたまっていたのか、この本には読んでいて噴出しそうになる箇所がいくつかある。自分の本のタイトルをパクッた奴がいるとして名指しで告発したり、匿名や変名での著作に対しては罰金をとれだとか言ったり、ヘーゲルおよびその影響下にある人間への悪口を言ったり、当時流行っていた言葉遣いに対して細かく文法的間違いを指摘したり、無駄に難しい文章を書いて読者を煙にまくなと言ったりと、非常に人間臭い。私は現代日本にも似たようなことを言っている人がいるなと思った。猫猫先生である。読んでいて不思議にストレス解消というか、やけにスカッとするところも似ている。