hkmaroのブログ

読書の感想など

1月に読んだ本

1月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5241ページ
ナイス数:4ナイス

ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)
翻訳SFにしては読みやすく、普通に恋愛小説として面白い。ソラリスの海に注目して不可知論とか知的生命との接触というテーマで読むこともできるが、この小説は最終的には叙情であり、主人公にとって結局それらの思弁は割りとどうでもよいことのようだ。複製としての存在が、他人から求められているオリジナルのイメージとのギャップに苦しむ話であるという意味では、最近の『ドッペルゲンガーの恋人』を思い出した。結末はだいぶ違ったが。
読了日:01月07日 著者:スタニスワフ・レム
ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
中高生時代に読んだときは全く内容が頭に入らない小説だったのだが、このたびじっくり読み返すとやっぱり会話中に何の説明もなく場面が移動してたりするし、随所に説明がかなり足りない感じがするしで、あらすじ程度もよくわからない小説だった。しかしおぼろげながらわかるのは、リンダがパトスを象徴し、主人公がそれから始終逃れられないという構図。人間は電脳空間でも肉を捨て去ることは結局できない、という認識が示される。
読了日:01月07日 著者:
ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)
観念論とはidealismであり、ドイツ・イデオロギーとはドイツのideologie、つまりドイツ観念論のことである。ヘーゲルを批判的に継承し唯物論的思想を唱えたフォイエルバッハであったが、その用語系は神学的観念論のそれであった。エンゲルスらはそれをさらに批判し、歴史、生産、交通、分業などの言葉によって唯物論を語る。「生産諸力・諸資本・社会的交通諸形態の総体、これこそが、「実体」とか「人間の本質」とかとして哲学者たちが表象したものの、また彼らが神格化したり挑戦したりしてきたものの、実在的な地盤である」
読了日:01月07日 著者:マルクス,エンゲルス
ユートピア (岩波文庫)ユートピア (岩波文庫)
空想的社会主義フーリエ主義の原型とも言える様な思想が語られていて、社会主義の書物やドストエフスキーを読む上では非常に重要な本だと思った。その共産主義者モアは、宗教的には中世からのカトリックにつく保守派だったことも興味深く、この点では『魔の山』のナフタを思い出す。自らの思想に殉じた、という意味でも二人は似ている。訳者による入魂の解説も一流であって、それ自体が文学作品である。『未来の考古学』を読む上での必要から読んだが、想像を超える名著だった。これをつまらないという自称「知識人」は恥を知るべきだと感じた。
読了日:01月08日 著者:トマス モア
夢判断 上 (新潮文庫 フ 7-1)夢判断 上 (新潮文庫 フ 7-1)
確かにフロイトの夢の解釈はかなり胡散臭いが、しかし先行する夢の研究への読み込みと、丹念な夢事例の収集は偉い仕事だと思う。現場で夢を研究してきた人の実感に裏付けられていると感じた(その実感が正しいのか間違っているのかは別として)。あらゆる夢は願望充足のためにみられるのだとし、夢の潜在内容と顕在内容を分け、人が現にみる夢は巧妙に無意識的な願望を隠した形でみられるのだと説く。
読了日:01月11日 著者:フロイト
中の下!  ランク1.中の下と言われたオレ (富士見ファンタジア文庫)中の下! ランク1.中の下と言われたオレ (富士見ファンタジア文庫)
田中ロミオの言うイージーモードとしてのラノベを地でいくラブコメ。しかし、内容的には「中の下」診断を下されることによって主人公がイージーモードを否定されるという導入部を持つ。これによって、あたかもノーマルモードで話がスタートしたかのようでありながら、実質的にはイージーモード的に主人公がモテまくるという巧妙な仕掛けが組み込まれている。つまり、あからさまなイージーモードに対する読者の構えを解くことに成功している。これにはラノベ創作における技術的な価値があるんではないかと思った。
読了日:01月15日 著者:長岡 マキ子
夢判断 下 (新潮文庫 フ 7-2)夢判断 下 (新潮文庫 フ 7-2)
後半に行くにつれてどんどんオカルトの度合いを増していくのだが、しかしフロイト自身後半に出てくる独自の概念は、物理的・器質的な対応物を持っているわけではないと認めている。あくまで心の諸機能を概念化しているだけのようだ。オカルト的な内容とは裏腹に、あくまでもフロイトの筆致は謙虚であり、実証できないことは実証できないと認めているし、証明できていない説に関しては「信ずる」「確信する」などと述べるのみである。読み終えた後に、最新の心理学と照らし合わせてみたくなる本。
読了日:01月15日 著者:フロイト
生徒会の一存―碧陽学園生徒会議事録〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)生徒会の一存―碧陽学園生徒会議事録〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)
初版は2008年一月で、会話ラノベブームの嚆矢かとも思えるが、意外にも本作は「会話モノ」であることに自覚的である。そしてその会話が終始くだらない逃避に過ぎないことにも開き直っている。作中人物の手になる「議事録」であり、つまりメタフィクションであって、この小説の軽薄さや陳腐さを批判しても実は全く有効ではない。作者にとってそんな批判は完全に想定内だろう。つまり「あえてする豚ラノベ」であって、これを読む者が気兼ねなく豚になれる言い訳をあらかじめ用意してくれている。この点が、本作の最も重要な点だろう。
読了日:01月16日 著者:葵 せきな
東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)
同じレーベルから出てる某文学少女と似たような話かと先入観から思っていたが、どう考えてもこっちの文学少女の方が(文学)オタク達の求めていた文学少女なのではないか。つまりそれはかつて文学青年や文学オヤジが綿矢りさにたいして投影していたイメージに他ならない。が、その願望はついに成就され切ることがなく、我々の理想の文学少女像は永らくイデア界をさまよい続けていた。ところが二次元の助力を得ることにより活字の世界に彼女は顕現した。
読了日:01月22日 著者:森橋ビンゴ
VS!!―正義の味方を倒すには (電撃文庫)VS!!―正義の味方を倒すには (電撃文庫)
いいんだけど、悪の組織なりの言い分と言うか、わざわざ悪いことしてまで世界を征服しようというそもそもの根本動機が全く不明なまま。ヒーローと悪者の対立構造が与件としてあり、倫理的な視点に欠ける。正義の論理を覆しうる「悪の正義」を示さなければ、如何にアツい展開やアイデアがあろうとダメだろう。
読了日:01月23日 著者:和泉 弐式
東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)
もう一人ヒロインが登場し、当然のように主人公に惚れているわけなのだが、私は安堵しつつも不満を抱いた。『君望』を持ち出すまでもなく、ラブコメや恋愛劇においては恋に敗れる者ほど魅力的なのである。失恋者は失恋者であるというだけで作劇上の価値を持つし、何より読者を味方につけてしまう。これにより我らの文学少女は他のキャラと横並びの位置にまで格下げされてしまった。
読了日:01月25日 著者:森橋ビンゴ
東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)
プロット抽出のために再読した。結果、キャラ同士が相互に乙女ちっく漫画的な思い違いをしているという点でBL小説ととても似た構造を持っているということが容易に看取された。誤解がさらに誤解を呼ぶ、という感じ。これを読んで人は「もどかしい」と感想を言うのだろう。
読了日:01月26日 著者:森橋ビンゴ
夜と血のカンケイ。 (電撃文庫)夜と血のカンケイ。 (電撃文庫)
この小説を面白いと感じられるようになるためにはかなりの訓練が必要であるということは確実に言えると思うが、ではなぜそうなのかということについて敢えて言葉を費やすことが途方もない遠大な仕事であるかのように思えることこそが、本作の評価についての最も的確な表現の一つであると言って言えないことはないと思う。
読了日:01月30日 著者:丸山 英人
フロイト著作集 第3巻 文化・芸術論フロイト著作集 第3巻 文化・芸術論
現代ではフロイトの理論は学問的に妥当だとはまず考えられていないのだが、じゃあ現代の我々がフロイトを読むことによって得られる一番の効能は何かというと、それは人間フロイトに触れられることである。彼は神経症者と健常者に本質的な違いはないと言った。異常者、モンスターなどこの世には存在せず、いるとしたら人類全てがモンスターなのである。同様に、フロイトは芸術家という名の天才も相対化してみせる。なぜフロイト好きがフロイトにああも惹きつけられるのか、その理由が分かった気がする。
読了日:01月31日 著者:フロイト
けんぷファー〈1〉 (MF文庫J)けんぷファー〈1〉 (MF文庫J)
面白いラノベはこの世に五分、クズが八割五分、残りの一割が、面白くはないんだけどまあ暇つぶしにはなるよね、っていう感じのラノベ。これはまさに暇つぶしラノベ。しかし暇がつぶせる分、暇つぶし目的で特別頑張らなくても最後まで読み通せる分、結構尊敬すべき仕事なのではないかと思う。クズを読み通すのはまさに苦役である。苦役を強いないというだけでも、このラノベには商品価値がある。
読了日:01月31日 著者:築地 俊彦

2012年1月の読書メーターまとめ詳細
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