hkmaroのブログ

読書の感想など

SS文体の合理性について

シンジ「……」モグモグ

サクラ「よく噛んで食べて下さいね」

シンジ「う、うん」モグモグ

シンジ「」ゴクン

サクラ「はい、あーん」

シンジ「……」アーン モグモグ

サクラ「どうですか?お口に合いますか?」

シンジ「う、うん。美味しいです…じゃなくて、えと、美味しいよ…。ありがとう」

サクラ「良かったわぁ。ふふっ、碇さんはホンマかわええなぁ」ナデナデ

シンジ「えっ、あ、そ、そんな…やめてくださいよ…///」

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アスカ「んぎぎぎぎ……!」ピキピキ

上記は『アスカ「ちょっとミサト!何なのよあの鈴原って子は!!」』というSSの一部分だ。

SSはよくできた文体を持っていて、例えば殆どの場合地の文というやつを持たず会話だけで話が進行する。それゆえ体感としては非常にテンポ良く物語を読める。しかもカギ括弧の頭にキャラ名が書いてあるので、誰が何をしゃべっているのか混同することはあり得ない。このシステムのおかげで、クソラノベにありがちな、あからさまな変な語尾(りゅん、とか、りょん、とか、みゅん、とかの類)や、地の文におけるくどい説明(Aは「」と言った。Bは「」と返事した。それに対してAは「」と言った。……というような死んだ文章)を必要としなくなっている。文章を読むことによって得られる萌え豚的快感をベースに考えた場合、ラノベの文体に比べてSSの文体は明らかに進化していると言っていい。

さらにSSは////という記号を使用したり、ナデナデ、ピキピキなどの擬音を使用することによっても地の文を排除している。のみならず、それらの記号を読むだけで、キャラがどんな表情でしゃべっているのかたちどころにわかる。この無駄の無さ。SSの文体は、純粋に記号による表現だけでエロゲー的体験を読者に与えてくれるものだといってよい。そもそもエロゲー・ギャルゲーの文章形式とSSの文体は極めて似通っている。ノベルゲーでないエロゲーも、テキストウィンドウの上に小さいウィンドウがあってそこにしゃべっているキャラの名前が表示されていたりだとか、あるいは文字の色がピンクだったらヒロインの台詞、青だったら主人公の台詞、だとかいうように分けていて、誰がしゃべっているのかを視覚化している。「誰それは『~~』と言った」だのというような言い回しを省くことができる。さらにエロゲーにおいては立ち絵の中で表現されるキャラの表情が、SSではカギ括弧後ろの記号により表現することができる。これらの記号の組み合わせが、エロゲー的な物語、SS的な物語をつむぐ。そこでは個々の表情の個別性は捨象される。例えば泣き笑い、というような折衷的な表情は、それに対応する「立ち絵=記号」が用意されていなければ表現し得ない。

これらの合理性というか効率性がもたらすのはテキストの視覚的な受容という効果であり、この「リーダビリティ」はエンタメ的小説が常に追い求めていた性質のものであろう。もちろん紙にこのSS文体が印刷されていたら読者は許せんふざけるな金返せと思うかもしれない。ネットという場所だからこそ許される特殊な文体なのかも知れない。スレ住人達による突っ込みがSS本文を補うことによって成立している文体なのかもしれない。それでも情報伝達の正確さおよび迅速さ及び効果性という意味ではSS文体は既存の小説の文体を遥かに上回っているように思う。確かに特殊なものや崇高なものを描写するには全然向かないのだが、そんなものを萌え豚やエンタメ読者は求めてはいないだろう。