hkmaroのブログ

読書の感想など

秋山はるの『オクターブ 2』を読んだ

帰りに本屋で買った。電車の中で読み終わってしまった。十九分で五百七十円。一分あたり三十円。ちょうど割れて気持ちの良い数字であるが、これが小説だと読み終わるのにもっと時間がかかるし、小説以外の難しい内容の本であれば一分あたりのお金はもっとお得だろう。しかし最近は学術書の値段が高くなっているとかいう話をたまに聞くので、難しい内容になるほど単位時間あたりのお金はちょっとずつ損な数字になっていくのかもしれない。
自分で描く段になると漫画は単位時間あたりの作業効率が非常に悪い。小説と漫画とでは、同じ五百円の商品を作り出すのに費やす労働力が違うという気がする。その割に描いた漫画はあっという間に読まれてしまう。一週間寝ずに漫画を描いても、その程度の分量であれば、まあ十分二十分で読み終えられてしまう。そんな性質の違いがあるのに、漫画業界が成り立っていて漫画家が食っていけている日本の世の中が、どれほど広く漫画を受け入れているのか、びっくりすべきなのかもしれない。とか思った。普通に考えたら需要が追いつかないんじゃないか。しかし、一瞬で読み終えられる漫画のことであるから、読者の余った時間を効率よく創作のほうに回すことができ、消費者の側が生産者に回りやすい性質を備えているのかもしれない。とはいえ漫画を描く作業は小説を書く作業より過酷だ。
ところで秋山はるの『オクターブ 2』だが、これは面白いなあ。本質的にはロスジェネ漫画という感じなのだけれども、主人公の精神の惰弱さがなんともいえない。田舎の描写とかはまあ誇張なんだけど、単に誇張とも言いきれないところがある。というのは、同じく田舎出身の私が共感できるからだ。自由を求めて都市に出てきたのに、その都市で自己滅却して他人に依存する主人公は何とも言えないくらい情けない。で、自由にやってる元友人たちを見て嫉妬する。単純に「節子さんがいるから私はOK」というような性による包括的承認を(得られたようにみえて)得られないところが主人公の葛藤のポイントなんじゃないかと思う。私の予想では、この話は自立をいかに達成するか、というようなところを目指していって、結局自立しないまま終了、というエヴァンゲリオンみたいな話になるような気がするのだけれどもどうだろうか。具体的には主人公がいろんな男とやりまくってフラれる度に節子さんに依存するとか。いずれにせよ、幼児化した最近の女流作家の小説とかよりも断然面白い。面白いしリアルだ。皮肉でもなんでもなく、漫画のほうが複雑なコミュニケーションを的確に捉えて表現しているという気がする。ほんとに小説なんか今時読んでいる場合ではないのかもしれない。